ミックスボイスは「地声のような声」です。また、強化ファルセットは「輪郭がはっきりした声質」です。ただ、「声質」が異なる以上、「違うもの」という見方をするのがベターなのではと思いました。

ただ、それぞれの声質には以下のような共通点があります。
- 「輪郭がはっきりしている」
- 「地声のような強さ」
「違う声質」にもかかわらず、共通点が見い出せる。これは発声におけるヒントが何かあるかもしれません。今回、強化ファルセットとミックスボイスの音源を聞き比べながら、僕なりに探ってみようと思います。
■「強化ファルセット」と「ミックスボイス」の例
まずは、それぞれの発声の例を上げてみます。
・例1. 裏声よりの強化ファルセット
・例2. ミックスボイスよりの強化ファルセット
・例3. ポップス系ミックスボイス
・例4. ロック系ミックスボイス
■「強化ファルセット」と「ミックスボイス」の共通点
実は「例2」「例3」は同一の歌手です。しかしながら、発声している声質は違うように聞こえたのではないでしょうか。
裏声は、「輪郭のはっきりしないふわっとした音」。強化ファルセットは「輪郭のはっきりした強い音」と言えます。この輪郭の強さは鼻腔共鳴による「高域倍音の強調」がキーになると考えています。
個人的な感覚の例えで申し訳ないですが、エレキギターアンプで例えます。アンプには「高域(TREBLE)/中域(MIDDLE)/低域(BASS)」と、音質を変更するためツマミがあります。
コントロールの種類 | 効能とポイント |
---|---|
TREBLE (HIGH)/高域の調整 | 音の輪郭がはっきりとします。掛けすぎると耳障りなサウンドになります。 |
MIDDLE (MID) /中域の調整 | 音の抜けが良くなります。掛けすぎると音の輪郭がぼやけます。 |
BASS (LOW) /低域の調整 | 太いサウンドになります。掛けすぎるとモコッとしたサウンドになります。 |
強化ファルセットは「TREBLE」を強調することで、輪郭のはっきりした音になっています。しかし、聞き慣れない人からすると「変な声、耳障りな声」にも聞こえてしまいます。一般的には「キンキンした声」と受け取られることが多いです。
ミックスボイスは、「高域/中域/低域」がバランスよく設定された「話し声のような自然な声」といえます。しいて言えば、中音域を強調している声といえるでしょう。
発声において、各倍音域の強調のさせ方は以下です。あくまで僕の感覚です。
- 高域:鼻腔共鳴を強める
- 中域:上咽頭腔を広げる感じ
- 低域:喉を広げる感じ
強化ファルセットと、ミックスボイスに感じる共通点は「地声感(強さ)」です。これは「輪郭がはっきりした声質」ということです。高域倍音を強調することで地声っぽさが生まれます。
■それぞれ基本は変わらない
上記で、「例2」「例3」は同一の歌手だとお伝えしました。強化ファルセットの場合、アンプの設定だと「高域」を強めている状態です。ファルセットでありながらも「強さ(地声感)」があります。
ミックスボイスの場合、高域だけでなくバランスよく中域も強めることで「自然な声質」に聞こえさせています。
しかし、あくまでも「自然な感じに聞こえさせている」というだけです。よく聞くと遠くに裏声の要素を感じられる思います。
■「強化ファルセット」も「ミックスボイス」も裏声の延長
今まで「ミックスボイスと、強化ファルセットは同じ」という認識を持っていました。しかし、いま思えば乱暴な分類の仕方だったと感じます。
裏声
↑↓
強化ファルセット
↑↓
ミックスボイス
上記のように、強化ファルセットも、ミックスボイスも「裏声の延長」で発声するようにするとスムーズな発声が得られる可能性が高いです。上記の例で上げた歌手も、切り換えているポイントは感じられませんでした。
強化ファルセットの例から、高域倍音を強調することで裏声に「地声っぽさ(強さ)」を付加することができます。また高域倍音は「鼻(鼻腔共鳴)」を使うことで得られます。
なお、発声の感覚を掴む練習方法は「【STEP 3】 裏声を鼻にかける練習」に記載してありますのでご参考までに。