ボイトレで「腹式呼吸」は意識しなくていい

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日常生活の中で、誰もが腹式呼吸を無意識に使っているはず。果たして腹式呼吸は「意識した方が良い」のか? それとも「意識しなくても良い」のでしょうか? 結論、私は「腹式呼吸を意識して練習する必要はない」と考えています。

一部のボイトレ教室では、腹式呼吸を意識した練習をすすめているようです。腹式呼吸により横隔膜を意識的に動かすことで、大きな声が出しやすくなったり、呼吸量がコントロールしやすくなるため歌の上達に繋がる、と言われています。

その一方で、歌は日常会話の延長で歌うように、と指導されることもあります。つまり腹式呼吸を意識しないということです。

以下に、「無意識に腹式呼吸を使っている例」を3つ挙げます。

■(1)吹き矢

最初の例は、吹き矢を吹くときです。紙を筒状に丸めたものに何かを詰めて、それを吹き矢の要領で遠くに飛ばしてみてください。

このとき、お腹に手を当てたままたくさん息を吸うと、お腹が膨らみます。もちろん、お腹に空気が入るわけではありません。たくさん息を吸う事で、お腹の筋肉が一部動いているだけです。そのまま筒の中身を勢いよく飛ばしてください。するとお腹に力が入ります。

この「息を吸う→一気に息を吐く」といった腹式呼吸の動きの中で、横隔膜を意識した人はいないでしょう。つまり無意識レベルで横隔膜を使えているということです。

普段、吹き矢をやる機会がないという方が多いかもしれません。そんな方は、口に含んだ氷を遠くに飛ばしてみてください。息を吐くまでの一連の動作は、吹き矢にかなり近いです。

歌の場合だと、「ア、ア、ア、ア、…」と短い音を断続的に出し続ける動きです。

■(2)大きな声を出す

次の例は、大きな声を出すときです。日常生活で大きな声を出すのはどんなときでしょうか。

例えば、接客のとき、応援するとき、助けを求めるとき、などがあります。こういった状況下で、横隔膜を意識して大きな声を出している人はあまりいないと思います。

実際に大きな声を出すときの動きは「息を吸う→声を出す」です。お腹に手を当てながら声を出すと、腹筋に力が入るのを感じるはずです。

歌の場合だと、声量のある声を出すときの動きです。

■(3)ろうそくの火を吹き消す

最後の例は、ろうそくの火を吹き消すときです。多くの方が、誕生日ケーキのロウソクの火を吹き消したことがあると思います。

ではお腹に手を当ててみてください。「息を吸う→継続的に息を吐き続ける」という動きの中で、腹筋に力が入るのを確認できるはずです。

ですが、ロクソクの火を毎日吹き消している人はいないでしょう。日常生活では、数メートル先のホコリを吹き飛ばす動きのほうが多いかもしれません。また小さく切ったティッシュペーパーを吹き飛ばすのも同じ動きです。

歌の場合だと、歌詞の語尾を伸ばし続けるためにロングトーンを出す動きです。

・・・

このように、何気ない動作で腹式呼吸を意識することはありません。それは歌うときも同じだと言えます。それでも「歌唱の場合は特別」という方もいるかもしれません。

■別意見1「腹式呼吸はお腹に空気をいれるため」

「歌うときはお腹に空気を入れて、腹式呼吸を意識する必要がある」という意見についてです。

空気はお腹ではなく肺に入ります。お腹に空気が入った場合、ゲップやおならとして排出されます。通常ゲップを歌唱時に使うことはありません。そのため「歌うときに腹式呼吸を意識する必要」は無いと考えています。

ただし、例外事例としてスティーブン・タイラーを挙げておきます。

Aerosmith – Eat The Rich (Official Video)

■別意見2「腹式呼吸は息をたくさん吸うため」

次に、「息をたくさん吸うために、腹式呼吸を意識する」という意見についてです。

息をたくさん吸うためには、肺活量を増やすことが大切です。肺活量を増やすためには、運動をすることが効率的だと考えられます。そのため「呼吸量を増やすために、腹式呼吸が必要」とは考えにくいです。

ちなみに、フレデリック・フースラーは「うたうこと : 発声器官の肉体的特質 歌声のひみつを解くかぎ」の中で以下のような見解を示しています。

「腹式呼吸」「胸式呼吸」「側腹呼吸」「肋間呼吸」などのように型や方式に分類された呼吸法は、いずれも本来全体がバランス良く協調して働かなければならない呼吸機能のうちの一部のみが突出して働くことによって生まれる不完全で不自然な呼吸法であり、呼吸をそのような型や方式に分類することや、意識的に行われる機械的、方式的呼吸法はすべて声楽の発声にとって有害である。

[参考]腹式呼吸 – Wikipedia

■意識して練習する必要はない

例として挙げた「吹き矢を吹く」「大きな声を出す」「ろうそくの火を吹き消す」という3つの動きは、私達が普段から何気なく行っていることです。その中で、多くの人が無意識に腹式呼吸をし、横隔膜を動かしています。これは「歌」という動作の中でも応用されています。

もしも腹式呼吸の練習でつまづいているのであれば、一度その練習を止めてみるのも一つです。また練習を見直すことで、現状が改善される可能性もあります。

以上、「歌うために、無意識に腹式呼吸を使うことはあっても、意識して練習する必要はない」という提案でした。

文:P丸

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